評価損益とは、保有中の建玉を現在の決済可能価格で決済したと仮定したときの、未確定の利益または損失です。現在プラスでも、決済前に相場が動けばマイナスへ変わります。確定損益は実際に決済が約定した後の損益であり、両者を同じお金として扱わないことが大切です。
取引画面では「評価損益」「建玉損益」「未実現損益」など、会社によって名称や表示範囲が異なります。為替差損益だけを示す画面もあれば、累計スワップを含む画面もあります。数字を見るときは名称だけで判断せず、ヘルプや取引説明書で内訳を確かめましょう。
評価損益と確定損益の違い
買い建玉は決済に使う売値が新規約定価格より高ければ評価益、低ければ評価損になります。売り建玉は反対です。ただし、画面に表示された評価損益は将来の受取額を保証する数字ではありません。実際の決済価格、スプレッド、スリッページ、スワップなどで最終結果が変わります。
| 比較項目 | 評価損益 | 確定損益 |
|---|---|---|
| 対象 | 未決済の建玉 | 決済が約定した取引 |
| 金額の状態 | 相場に応じて変動する | 原則として決済後に確定する |
| 主な確認画面 | 建玉一覧、口座状況 | 約定履歴、取引報告書 |
| 証拠金への影響 | 純資産や証拠金維持率へ反映される場合がある | 口座残高へ反映される |
| 税務上の扱い | 商品・契約・時点により確認が必要 | 年間損益として集計対象になり得る |
たとえば、ドル円を150.00円で1,000通貨買い、決済に使う売値が150.30円なら、為替差だけの評価益は概算300円です。149.70円なら概算300円の評価損です。この例は仕組みを理解するための単純化で、スワップや各社の計算・端数処理は含めていません。
評価損益はどの価格で計算されるか
FXでは通常、買い建玉を閉じるときは売値、売り建玉を閉じるときは買値を使います。チャートで見た代表価格やニュースの為替レートと、実際に決済できる価格が同じとは限りません。売値と買値の差がスプレッドです。
画面の評価価格がどのレートを使うか、スワップを含むか、更新間隔はどの程度かを確認します。通信が切れた画面の数字や、更新が止まったレートを現在値と考えてはいけません。決済注文を出す直前には建玉、数量、売買方向、提示価格をもう一度見ます。
口座残高だけでは資金余力を判断できない
建玉を持つと、口座残高が変わっていなくても評価損益によって純資産が動きます。含み損が増えれば証拠金余力や証拠金維持率が下がり、会社が定める基準へ達するとロスカットの対象になる可能性があります。
「まだ確定していない損だから大丈夫」と考えるのは危険です。評価損は未確定でも、現時点の口座余力を減らします。反対に、大きな評価益があっても、その利益を前提に新しい建玉を増やせば、相場反転時に複数の建玉が同時に悪化することがあります。
確認の順序は次のとおりです。
- 口座残高と純資産の違いを確認する。
- 建玉ごとの評価損益と、口座全体の合計を分けて見る。
- 必要証拠金、余力、維持率、ロスカット基準を同じ画面で確認する。
- 逆方向へ動いた場合の損失額を数量と値幅から計算する。
- 許容損失を超える前に使う決済条件を決める。
ロスカットの仕組みは損失上限を保証するものではありません。急変や週明けの価格差では基準を越えた価格で執行され、預けた証拠金を上回る損失が生じる可能性があります。
複数の建玉があるときの見方
同じ通貨ペアを異なる価格で複数回取引すると、建玉を一本ずつ表示する会社と、平均価格や合計数量でまとめる会社があります。決済方法も、古い建玉から決済する方法、対象を指定する方法などがあり、契約によって異なります。
合計評価損益だけを見ると、どの取引がどれだけのリスクを持つか分かりにくくなります。少なくとも通貨ペア、売買方向、数量、新規価格、評価損益、逆指値の有無を建玉ごとに確認します。両建ての場合は、売りと買いが相殺しているように見えても、スプレッドやスワップ等の負担が残り、必要証拠金の扱いも会社ごとに異なります。
評価益を「使える利益」と早合点しない
評価益は決済するまで変動します。評価益を理由に取引数量を増やすと、元の建玉と追加建玉が同時に逆行したとき、想定より速く余力が減ることがあります。利益を確定するか保有を続けるかは、相場予測だけでなく、最初に決めた保有期間、損失上限、資金目的と照らして判断します。
決済注文を出しても、注文が約定するまでは確定損益ではありません。成行注文は成立を優先しますが、急変時には画面で見た価格と異なる価格で成立する可能性があります。指値注文は価格条件を指定できますが、相場が到達しなければ成立しません。注文方法は指値注文の基本も確認し、利用会社の執行条件を優先してください。
計算と記録の実務
取引ごとに次の項目を記録すると、評価と確定を混同しにくくなります。
| 記録項目 | 記録する理由 |
|---|---|
| 新規約定日時・価格・数量 | 損益計算の起点を残す |
| 現在の決済可能価格 | 評価時点を明確にする |
| 評価損益とスワップの内訳 | 為替差と受払を分ける |
| 逆指値と許容損失 | 当初計画との差を確認する |
| 決済約定価格・確定損益 | 実際の結果を残す |
| 取引報告書の保存場所 | 年間集計と照合する |
スクリーンショットだけでは、表示時刻や計算条件が分からなくなることがあります。CSVや取引報告書を保存し、自分の記録と照合します。税額は個別事情で変わるため、FXの税金の基本を入口に、国税庁資料や税務専門家へ確認してください。
よくある誤解
評価益が表示されていれば同額で必ず決済できますか
いいえ。レートは動き続け、注文の種類や市場状況によって実際の約定価格が変わります。表示値はその時点の評価であり、受取額の保証ではありません。
含み損を決済しなければ損失は発生しませんか
未確定ではありますが、純資産や維持率に影響します。相場がさらに逆行すればロスカットや不足金につながる可能性があります。
評価損益と有効証拠金は同じですか
同じではありません。評価損益は建玉の未確定損益、有効証拠金や純資産は口座残高へ評価損益などを加減した口座全体の指標です。名称と算式は各社資料で確認します。
取引前の確認事項
- 評価損益にスワップが含まれるか
- 評価に使う売値・買値と更新時刻
- 複数建玉の表示・決済順序
- ロスカット基準と判定間隔
- 急変時や通信障害時の注文方法
- 取引報告書の損益との照合方法
FXは元本保証ではなく、為替変動、金利差、流動性低下、システム障害などのリスクがあります。評価損益を眺めて判断を遅らせるのではなく、注文前に数量と損失上限を決め、生活費や借入金を使わないことが前提です。
参照した一次資料
- 金融庁「外国為替証拠金取引について」(2026年9月25日確認)
- 東京金融取引所「取引所為替証拠金取引 制度要綱」(2026年9月25日確認)
個別会社の表示名、算式、ロスカット条件は変更されることがあります。公開前と実際の取引前に、利用会社の最新の契約締結前交付書面・取引説明書で再確認してください。