FXの追証(おいしょう、追加証拠金)とは、会社が定めた判定時点に口座の純資産や時価評価総額が必要証拠金を下回った場合などに、不足分の解消を求められる仕組みです。多くの個人向け店頭FXでは、入金または建玉の一部・全部の決済によって、指定期限までに追加証拠金額を解消する必要があります。ただし、判定時刻、対象となる口座、解消期限、計算方法、未約定注文の扱い、期限を過ぎた場合の措置はFX会社・商品・コースで異なります。
追証を「相場が戻るまでの入金案内」と考えるのは危険です。公式ルール上、追証発生後に相場が戻って証拠金維持率が回復しても、追証が自然に解消されたとは扱わない会社があります。期限までに所定の方法で解消できなければ、全建玉の強制決済などが行われます。強制決済の価格は期限時点の価格を保証せず、相場急変時には損失がさらに増え、口座資金を超える不足額が残る可能性があります。
追証、ロスカット、決済後の不足額は別のもの
似た言葉を区別すると、通知を受けたときに確認すべきことが明確になります。
| 用語 | 何が起きているか | 主に確認する資料 |
|---|---|---|
| 証拠金維持率の低下 | 必要証拠金に対する純資産等の割合が下がっている | 取引画面の資産状況、計算式 |
| 追証・追加証拠金 | 定められた判定で必要証拠金の不足額が確定し、期限内の解消を求められる | 追加証拠金ルール、取引説明書 |
| ロスカット | 会社所定の水準で建玉を強制決済する仕組み | ロスカット基準、監視・執行方法 |
| 追証未解消による強制決済 | 追証を期限までに解消しなかったため建玉を処分する措置 | 追証期限、強制決済条項、手数料 |
| 決済後の不足額 | 確定損失等が口座資金を上回り、残高が不足している状態 | 約定履歴、入出金明細、契約条項 |
ロスカットは相場の動きの中で会社所定の基準に達したときに行われる仕組みで、追証は営業日終了時などの定められた判定により発生する場合があります。会社によっては追証期限より前でも、相場がさらに悪化してロスカット水準に達すればロスカットが執行されます。「明日の期限まで待てる」という意味ではありません。証拠金維持率の計算とロスカットの発動までの流れを分けて確認してください。
追証額の基本的な見方
説明用に、判定時点の必要証拠金が60,000円、会社のルールに基づく純資産等が52,000円だったとします。単純化すると不足は8,000円です。
| 判定項目 | 説明用の金額 |
|---|---|
| 必要証拠金 | 60,000円 |
| 純資産等 | 52,000円 |
| 単純化した不足額 | 8,000円 |
実際の追加証拠金額は、各社が定める純資産・時価評価総額の定義、注文証拠金、出金予約、外貨残高、代用有価証券、両建て、決済損益などによって変わります。この表だけで自分の追証額を計算せず、取引画面に表示された金額と公式の計算式を確認してください。
8,000円を入金すれば必ず安全になるわけでもありません。入金後に相場がさらに逆行すれば、評価損が増え、ロスカットや新たな不足につながります。建玉の一部を決済する場合も、どの程度が追証解消額へ充当されるかは会社の計算ルールに従います。入金と決済のどちらが自分の損失上限に合うかを考え、損失を取り戻す目的で別の建玉を増やさないことが重要です。
公式ルールを比べると期限と措置が違う
次の表は、2026年9月24日に各社の公式ページで確認した個人向けサービスの例です。会社全体のすべての商品に共通する条件ではありません。年末年始やクリスマスなどの変則営業では期限が変わる場合があり、ルール改定もあり得ます。実際に追証が発生した場合は、この記事の表ではなく、自分の口座に表示された通知と最新の契約書面を優先してください。
| 公式資料で確認した例 | 主な発生条件 | 原則的な解消期限・方法 | 未解消時などの主な措置 |
|---|---|---|---|
| GMOクリック証券「FXネオ」個人口座 | 毎営業日のニューヨーククローズ時点で、時価評価総額が取引金額の4%相当額を下回る、すなわち証拠金維持率100%未満 | 発生日の翌営業日(祝日を除く)午前3時までに入金、または建玉の全部・一部を決済 | 発生判定時に発注中の新規注文を取消し、新規注文・振替出金を制限。未解消なら全建玉を反対売買する強制決済 |
| DMM FX | 毎営業日クローズ時点の判定で証拠金維持率100%未満 | 発生日の翌営業日04時59分までに入金、またはポジション決済で追加証拠金額を0円にする | 新規取引・出金予約等を停止し、新規未約定注文等を取消し。未解消ならマージンカットとして保有ポジションを強制決済 |
| 楽天FX「スタンダード25倍コース」個人口座の例 | 取引日終了時点で純資産額が必要維持証拠金額を下回る、すなわち証拠金維持率100%未満 | 原則、翌取引日18時までに追証額以上を入金、または建玉の全部・一部を決済 | 未解消なら口座の全建玉を強制決済。追証後の相場回復だけでは自然解消としない |
三社とも表中の例では証拠金維持率100%未満が一つの基準ですが、判定の表現、期限、取引制限、対象コースが違います。これを「国内FXはすべて100%・翌日まで」と一般化してはいけません。楽天FXの公式ページでは、個人口座の追証はスタンダード25倍コースの例として示され、他のレバレッジコースと条件が異なります。利用中の会社名だけでなく、商品名、個人・法人、コースまで一致させて確認します。
追証が発生する流れ
まず、建玉の評価損や必要証拠金の変化によって証拠金維持率が低下します。その後、会社所定の判定時点で条件に該当すると、追加証拠金額が計算されます。通知は取引画面やメールで行われることがありますが、メールの遅延や不着も考えられます。建玉を保有している間は、自分で取引画面を確認する必要があります。
追証発生後は、会社のルールに従って新規注文や出金が制限され、発注中の新規注文が取り消される場合があります。OCOやIFD-OCOのような複合注文では、新規注文を含む組み合わせの扱いも確認が必要です。決済注文が残るかどうかを思い込みで判断せず、未約定注文一覧を確認します。
期限までに入金または建玉決済などの所定手続きを行い、追加証拠金額がゼロになったことを画面で確認します。金融機関から総合口座へ入金しただけでは、FX証拠金口座への振替が完了していない場合があります。反映までの時間もあるため、期限直前の操作を前提にしないでください。
相場が戻っても追証が消えない場合がある
GMOクリック証券、DMM FX、楽天FXの上記公式資料はいずれも、追証発生後に相場変動で維持率が回復しただけでは解消と扱わない旨を示しています。これは、リアルタイムの維持率表示と、一度確定した追加証拠金額を別に管理しているためです。画面上の維持率が100%を超えたから対応不要だと判断せず、「追加証拠金額」の表示がゼロになったかを確認します。
また、含み損の減少を待っている間に相場が再び逆行すれば、ロスカットが先に執行される可能性があります。追証期限は、建玉をその時刻まで必ず維持できる権利ではありません。会社のロスカット基準や任意処分に関する条項も読みます。
期限までに解消しないとどうなるか
未解消時の一般的な措置は、保有建玉の強制決済です。ただし、期限の時刻ちょうどに、その時点の表示価格で全建玉が約定するとは限りません。GMOクリック証券の公式ルールは、強制決済を対象顧客へ順次執行するため午前3時時点の約定を保証せず、完了までに時間がかかり、相場変動によって損失が拡大する場合があると明記しています。また、この強制決済は損失を限定するためのロスカットとは異なると説明しています。
強制決済後も、確定損失や手数料が口座資金を上回れば不足額が残る可能性があります。FXで借金が残る場合では、追証と決済後の不足額を分けて説明しています。金融庁も、相場が急激に変動した場合は、ロスカットが適用されても証拠金を上回る損失が生じることがあると注意喚起しています。強制決済やロスカットを、損失上限の保証として扱わないでください。
追証通知を受けたときの確認手順
1. 通知の送信元と口座画面を確認する
メール内のリンクをすぐに開くのではなく、登録済みの公式アプリや公式サイトからログインします。追証額、発生日、解消期限、対象商品、建玉、未約定注文を確認し、画面と通知を保存します。不審な入金先へ振り込まないでください。
2. 最新の公式ルールを読む
契約締結前交付書面、取引ルール、追加証拠金ページを開きます。判定時刻、計算式、解消方法、自然回復の扱い、ロスカット、未解消時の強制決済、手数料、変則営業の告知を確認します。古いスクリーンショットや比較記事だけで期限を判断しません。
3. 入金と建玉縮小を損失額で比較する
入金は建玉の価格変動リスクを消しません。建玉を残すなら、さらに不利な価格まで動いた場合の損失を円で計算します。建玉の一部または全部を決済する場合は、確定損失と、減少する必要証拠金を確認します。FXの利益と損失の決まり方で数量と値幅を円換算してください。生活費や借入金で追加入金して損失を先送りする判断は避けます。
4. 反映完了を確認する
入金先が総合口座とFX口座に分かれている場合、必要な振替まで行います。会社によっては解消確認に時間がかかります。振込操作の完了画面ではなく、FX取引画面の追加証拠金額がゼロになったこと、制限が解除されたことを確認します。不明なら、期限より前に公式サポートへ問い合わせ、問い合わせ日時と回答を記録します。
5. 支払いが難しい場合は早めに相談する
不足額が大きい、計算根拠が分からない、期限内の対応が難しい場合は放置せず、まず契約先の正式な窓口へ確認します。取引履歴、約定価格、入出金明細、通知を保存してください。解決のために別の高レバレッジ取引を行うと、損失を増やすおそれがあります。個別の債務や契約上の義務は、必要に応じて法律・債務の専門家や公的相談窓口へ相談します。
追証を避けるために取引前にできること
追証は通知後の対応だけでなく、建玉を持つ前の数量設計が重要です。必要証拠金ぎりぎりまで取引せず、損切りまでの値幅と許容損失額から数量を決めます。重要指標、金融政策発表、休日、週末をまたぐ場合は、相場が飛ぶ可能性を含め、数量を減らすか保有しない選択を検討します。
逆指値を置いても、急変時には指定価格と実際の約定価格がずれるスリッページが起こります。口座資金に余裕を持たせても損失の発生を保証なく防げるわけではありません。取引前に、追証の判定時刻、ロスカット水準、入金経路、連絡先を確認し、ルール改定のお知らせを読める状態にします。
よくある質問
追証額を入金すれば建玉を維持できますか?
その時点の追証を解消できても、その後の価格変動で評価損が増えれば、ロスカットや別の不足が生じる可能性があります。入金は損失を確定させないための保証ではありません。画面上の解消確認と、残した建玉の損失試算を分けて行います。
期限まで相場の回復を待ってよいですか?
会社によっては、相場が戻って維持率が回復しても追証は自然解消しません。また、期限前にロスカット水準へ達する可能性があります。利用会社の公式ルールに記載された方法で、追加証拠金額がゼロになったことを確認する必要があります。
ロスカットがある国内FXなら証拠金以上は失いませんか?
いいえ。金融庁は、相場急変時にはロスカットが適用されても証拠金を上回る損失が生じることがあると説明しています。スプレッド拡大、流動性低下、スリッページなどにより、想定価格で決済できない場合があります。
参照資料と確認日
- 金融庁「いわゆる外国為替証拠金取引について」:相場変動・流動性リスク、ロスカット後も証拠金を超える損失が生じる可能性。2026年9月24日確認。
- GMOクリック証券「FXネオ 取引ルール(個人のお客様)」:追証の判定、発生条件、解消期限、未解消時の全建玉強制決済と執行上の注意。2026年9月24日確認。
- DMM FX「追加証拠金制度」:毎営業日クローズ時の判定、翌営業日04時59分の期限、入金・ポジション決済、マージンカット。2026年9月24日確認。
- 楽天証券「楽天FX 追証(追加証拠金)」:対象コース、判定、原則翌取引日18時の期限、自然解消を認めない扱い、未解消時の全建玉強制決済。2026年9月24日確認。
本記事は追証の仕組みに関する一般的な情報であり、個別契約や債務の法的判断、投資助言ではありません。会社・商品・コースにより条件が異なり、ルールは変更されます。必ず自分の契約書面と口座通知を確認してください。FXは元本保証ではなく、スリッページや相場急変により、預けた証拠金を超える損失が発生する場合があります。